エルサルは日本との深い関わりのある生産者でもあります。彼等は生産性を高め・質の高いコーヒーを目指し、有機的なコーヒー生産を積極的に行っています。その中で、ぼかし肥料を中心とした農地づくりを行っています。
ぼかし肥料は、代表的な例ですと米ぬかなど窒素分を含む有機物に土やもみ殻を混ぜ、発酵させた肥料です。発酵している事で多くの微生物を含む事から効き目が早く、効果が持続する事、ぼかしの名前の通り少量でぼかして使用しても効果が大きい事が特徴でもあります。日本では多くの農業に昔から使用されてきました。エルサルで利用されているぼかし肥料は、日本で研究されたEM(Effective Microorganisms:共存共栄する有用な微生物の集まり)を利用して、有機物を発酵させた資材が用いられています。
エルサル・デ・サルセロのリカルド氏は、アース大学のタボラ教授を通じてこのEMを利用したぼかし肥料を使った有機栽培農法を学びました。当時アース大学では、日本の琉球大学から技術を学び、他の農産物においてこの農法をスタートしていました。これを知ったリカルドさんは、除去した果肉などの収穫残さを利用し、コーヒー生産に応用できないかと2000年からエルサルで本格的に導入が始まりました。
土壌の安定化がもたらす品質の向上
現在では、EMを使い外果皮や果肉を発酵させて作ったぼかし肥料を利用した土壌づくりを行っています。また肥料だけでなく、適切な微生物を直接葉面散布する事で病害虫対する耐性を強めています。こうしたEMを利用した有機的で循環型の農法を取り入れる事で、毎年の品質や収穫量の安定化だけでなく、チェリーの糖度の向上に繋がり、安定した素晴らしい品質のコーヒーを毎年提供しています。そして現在エルサルではこうした有機農法によって生産されたコーヒーをクリーンプロダクトとして新しい認証プログラムにしようと、プロジェクト提案を行い、彼らの培ったノウハウでコーヒー生産の未来を輝かせようとしています。
※アース大学とEMぼかし肥料
アース大学は、コスタリカ東部にある国際的な農業大学です。元コスタリカ大統領で1986年にノーベル平和賞を受賞したオスカル・アリアス氏を中心に中南米の農業振興を目的に1990年に設立されました。エルサルが学んだEMぼかし肥料を中心とした有用な微生物を利用した農法は、90年代後半に同大学のタボラ教授と琉球大学比嘉名誉教授を中心とした研究機構との技術支援によって推進され、バナナやコーヒー、カカオの生産現場で利用されています。また、現在では農業だけに留まらず水産や畜産など多くの分野に活用されています。